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東京高等裁判所 平成5年(う)1442号 判決

主文

原判決を破棄する。

被告人は無罪。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人清水洋二、同清水勉、同今村核連名作成名義の控訴趣意書及び同補充書に記載されたとおりであるから、これらを引用する。

控訴趣意中、事実誤認の主張について

一  論旨は、要するに、原判決は、被告人が、原判示日時に○○荘一階の当時の被告人方仕事場において、知人の甲野太郎から借金の催促を受けた際、憤激して裁鋏を両手で握り、その刃先を同人の腹部に向けて突きかかり、更に、その左脇腹を足蹴にする暴行を加え、右鋏の刃先を左手でつかんで抵抗した同人に全治五日間を要する左手栂指丘擦過傷の傷害を負わせた旨認定した、しかし、被告人は、甲野からアイロンがけに使用する作業台上の高温に熱せられたガスアイロンで顔面ないし頭部を数回殴打されたため、自己の生命・身体を防衛するため、本縫いミシンの上にあった裁鋏を左手でつかみ、右鋏を横にして甲野の身体に向けて両手で前に押して抵抗したところ、アイロンを床に投げ捨てた甲野との間で鋏の取り合いとなり、その過程で、甲野が左手栂指丘擦過傷の傷害を負ったというのが真相である、そして、甲野の右傷害は、アイロンの皮膚接触に起因する火傷による自傷行為の可能性が濃い、右のとおりで、原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認があり、破棄を免れない、というのである。

二  そこで、検討するのに、まず、甲野の原審証言によれば、本件当日、同人は、護身用に木刀をもって被告人方に借金の催促に行き、作業場の入口を入って、右側の作業台のところに木刀を置くと、ミシンを踏んでいた被告人が甲野の方を振り向いて「何だ」と言ったので、被告人に「どうしてくれるんだ」と言うと、被告人は、「ぶっ殺してやる」と言って裁鋏を右手でつかんで立ち上がり、左手を添え、刃先を甲野の腹の辺りに向けて突き出して来た、そこで、同人は、両手でそれをつかみ、被告人と取り合いをしたが被告人が裁鋏を離さなかったので、作業台の上にあったアイロンを右手に取り、それで被告人の首から上の辺りを殴った、というのである。他方、被告人も平成三年一一月一二日付検察官調書において、甲野が被告人方に借金の催促に来て被告人と口論となり、被告人が先に裁鋏を持って甲野に突きかかり、これを両手につかんだ甲野と裁鋏の取り合いになったが、被告人が裁鋏から手を離さないでいると、怒った甲野が作業台の上に置いてあった熱いままのアイロンを手に持ち、被告人の顔を殴った、その後、揉み合いが続き、結局、甲野が被告人から裁鋏を奪って外に出た旨供述する。しかし、その反面、被告人は、原審において右供述を翻し、自分が先に手を出したことを否認して、被告人が甲野に「取立屋さんまだ来ないよ」と言ったところ、同人にアイロンで右目の下を一回殴られ、血が飛び散り、右目が見えなくなった、そこで、両手でアイロンの把手を甲野の手の上から押さえたが、甲野はなおも同じ場所を二〜三回アイロンを押すようにして叩いた、被告人は夢中になって、右手でアイロンを支えながら左手で裁鋏をつかんでその柄の方を甲野に向け、自分の腹の辺りに持ってきたときに甲野はアイロンを床に投げ捨て、被告人の持っていた裁鋏を奪おうとしてつかみかかり、二人で裁鋏をつかんだまま揉み合いになった、と供述する。

原判決は、この被告人の原審供述について「弁護人らの主張に対する判断」の中で、特に「被告人供述の信用性について」という項を起こして詳細な検討を加えており、その結果、右供述には不自然、不合理な点が多いとしてその信用性を否定し、甲野証言及び被告人の前記検察官調書に依拠して被告人を有罪としたと認められる。

確かに、原判決も指摘するように、被告人の否認供述のとおりであれば、被告人は当初は両手で、後には右手だけで甲野のアイロンによる攻撃を防いだというのであるが、そうだとすれば、アイロンを持つ甲野の手を押さえたとしても、自らも火傷を負ってもよさそうに思われるのに、現実には負っていないことや、被告人は捜査段階においては、否認の調書においてすら、鋏を右手に取り、突き刺してやろうと思って突き出した旨述べていたのに、公判廷においては、左手を後ろに回して鋏をつかんだと述べるとともに、刃を向けたことや突き刺そうと思ったことはない旨述べるなど、自分の行為を合理化する方向に供述を変え、そのため、被告人の行動は、かえって、甲野の攻撃に対する反撃にも防御にもならないような不自然な行為態様となっているのであって、この弁解に全幅の信頼をおくわけにいかないことも事実である。

しかしながら、本件においては、事件発生当時現場にいた者は被告人と甲野だけであって、ほかに両者の紛争の状況を目撃した者は誰もおらず、甲野証言と被告人供述の信用性如何が犯罪の成否を決するといっても過言ではないのであるから、当審としても、この点については、原審の判断をにわかに追認することなく、慎重に検討することとする。

三  まず、甲野証言の信用性について考察するのに、甲野は、原審においておおむね原認定に沿う供述をしているところ、その供述内容には、看過しがたい疑問点がいくつかあることを指摘せざるをえない。主要な点は、以下のとおりである。

(1)  甲野の供述によると、前述のとおり、甲野が被告人方仕事場に入ったとき、被告人は甲野の方を振り向いて「何だ」と言ったので、甲野が「どうしてくれるんだ」と言って貸金の返済を催促するや、被告人が「ぶっ殺してやる」と言って、裁鋏を右手でつかんで立ち上がり、左手を添え、刃先を甲野の腹の辺りに向けて突き出してきたというのである。しかし、被告人には、甲野に対して約一三六〇万円という多額の借金を負っているという弱みこそあれ、同人に対して強く出られる理由は何もないのであるから、そのような被告人が、借金の返済を迫られただけで、いきなり「ぶっ殺してやる」と言って鋏を手にしこれを甲野に向けて突き出すというのは、それまでの返済をめぐるいきさつを考慮しても、いささか不自然といわざるをえない。

一方、被告人は、この点について、ミシンを踏んでいると、甲野が木刀を持って入ってきて、丸椅子に座ったので、甲野の方に向き直り、少し前ころ甲野が取立屋に取立てを頼んだと言っていたのに、取立屋が来ないので、「取立屋さんに払えと言われたが、取立屋さんはまだ来ないよ」と言ったところ、甲野はいきなり立ち上がって右手を伸ばし、板台(作業台)上にある熱せられたガスアイロンを手にして、被告人の右目の下を殴り、「値段が合わないんだよ」と言ったというのである。甲野が木刀を持って被告人方仕事場を訪れたことからも窺われるように、甲野はことと次第によっては喧嘩になる事態も予期していたと認められること、被告人の口から取立屋云々の話が出たことに間違いなく、このことは甲野も自認していること(もっとも、甲野によれば、取立屋云々の話は両者が鋏を取り合っている最中に出たというのであるが、鋏を取り合っている最中に、そのような話が出るというのはいささか不自然であって信用しがたい。)などを考えると、被告人の右供述はそれなりに自然で納得できるというべきであり、この供述と対比するとき、甲野の供述の不自然性は否定しがたいところである。甲野が持参した木刀を使用せず、人を殴打するに適しないアイロンを使用したことも、かっとなって、すぐ手の届くところにあったアイロンを手にしたとすれば、説明は容易であって、何ら前記判断を左右するものではない。

(2)  甲野の供述によると、同人は、被告人から両手で握った裁鋏を甲野の腹部付近に突き出されて、右手で被告人の右手を、左手の親指と人差指の付け根で刃先をつかむようにして左手で刃先と被告人の左拳を握って刃先をそらし、被告人の攻撃を防いだというのである。しかし、甲野としては、不意を突かれて攻撃を受けたのであるから、六〇〜七〇センチメートルという至近距離で相対していたというのに腹部に何の傷も受けずに、そのような機敏な防御ができたのか疑問がある。

また、甲野は、その後、刃先を握った左手で被告人の攻撃を防ぎつつ、右手で板台上にあるアイロン台にのせられたガスアイロン(重さ約3.7キログラムで高温に熱せられていたことが明らかである。)の把手を握り、これを振り上げて被告人の右顔面を三〜四回殴打したというのであるが、甲野がきき手でない左手のみで被告人の両手による鋏の攻撃を防ぐことができるのかも疑問なしとしない。

更に、甲野の供述によれば、被告人は両手で鋏をつかんだまま離さなかったというのであるが、そうだとすると、甲野のアイロンによる殴打を、被告人は手で防ごうともしなかったということになり、この点も不自然といわざるをえない。

(3)  甲野の供述によると、甲野が被告人方仕事場に入った時、実況見分調書現場見取図(三)記載の二脚の丸椅子のうち左側の椅子に腰掛けてミシンを踏んでいたというのであるが、被告人は右側の丸椅子に座って本縫いミシンをかけていたと認められるから、甲野の右供述は事実に反するし、同人が被告人をアイロンで殴打した際にアイロンがあった位置について、甲野は、板台上の窓際に寄った辺りにあったというのであるが、アイロンは板台上の左側(入口寄り)にあったアイロン台の上に置かれていたことが明らかであるから、この点も事実に反するものといわざるをえない。

これらの点について、原判決は、甲野証人の記憶の誤りを善解し、証言の信用性を減殺する理由とはならないとするが、甲野は被告人方仕事場にも頻繁に出入りし、室内の様子をよく知っていたと認められるから、被告人方仕事場の状況の認識が浅かったとはいいがたく、必ずしも原判決のような推測が合理的であるとは認められない。

(4)  また、甲野がアイロンで被告人を殴打した際の両者の位置関係について、甲野は、原審第四回公判においては、被告人が鋏を両手に持って窓際の方を向き、甲野がその反対の方を向いていたと供述したが、第九回公判においては、甲野が窓の方を向き、被告人が窓に背を向けていたと供述し、その間に大きな食い違いがある。

この点について、原判決は、狭隘な現場で懸命に鋏の取り合いをしている際、両者の刻一刻の位置関係につき正確な記憶があるということは通常ありえないことであるし、右供述が客観的状況に著しく反していることを考えると、記憶違いというよりもむしろ言い間違いといってよい、甲野がアイロンを手にすることができないような位置関係を述べる第四回公判における供述は錯誤によるものというほかなく、供述の訂正が甲野証言に致命的なダメージを与えているということはできない、というのである。

しかし、何度も位置関係が変わったような場合において、個々の場面における正確な位置は覚えていないというのなら理解できるが、狭隘な空間において一回、しかも一八〇度も位置が入れ替わったと述べる場合にまで、原判決の推論が妥当するか疑問なしとしない。甲野は、捜査段階において何度も両者の位置関係について尋ねられたはずであり、両者の位置関係の持つ意味についても十分理解していたと思われる。しかるに、甲野は、第九回公判において、第四回公判においてそのようには供述していないと述べるにとどまり、納得のいく説明をしていない。これらに照らせば、第四回公判における供述が単なる言い間違いであるとする原判断は相当でなく、このような重要な点について、甲野の供述が大きく変遷したこと自体、甲野証言の信用性を損なうことは明らかである。

(5)  甲野は、被告人を殴打した後アイロンを元の位置に戻した、アイロンが下に落ちてアイロンの管が抜けたことはなかったというのであるが、事件直後に現場に臨場した警察官の供述等に徴しても、甲野がアイロンを床に投げ捨てたため、アイロンに付いていたガス管が外れたものと認められ、甲野のこの供述も事実に反するものである。

この点について、原判決は、甲野の供述が誤りであることを認め、甲野の供述には自己の粗暴な行為に対する多少防御的な色彩が感じられないでもないとしながらも、興奮の結果、記憶に一分欠落が生じたと考えられる余地があり、甲野証言の核心部分の信用性を損なうものではない、というのである。

しかし、甲野はアイロンを元の位置に戻したと供述しているのであるから、記憶に欠落があるとはいいがたいし、甲野は、アイロンが熱せられていたかどうかわからなかったともいうが、甲野もかっては仕立屋であり、その職業的経験からすれば、アイロンが熱せられていることは容易にわかるはずであり、この点に関する甲野の供述も不自然というほかない。甲野証言の信用性を判断するに当たって、同人のこのような自己防御的姿勢を軽視することは許されない。

以上述べたとおり、甲野証言には、不自然・不合理な点、客観的事実に反する点が多々存在し、重要な点についての供述の変遷も認められるので、これらを勘案すると、被告人から先に鋏で突きかかられたという甲野証言の信用性には重大な疑問を抱かざるをえず、原判決は甲野証言の評価を誤っているといわざるをえない。

四  次に、被告人の供述状況をみていくと、まず、警察官村山道雄の原審証言によれば、被告人は、事件直後、現場に臨場した同警察官に対し、甲野と口論をしているうちに頭にきたので、身近にあった鋏を持って甲野に突きかかったところ、甲野がその鋏を取り上げようとして揉み合いとなり、甲野にアイロンで殴られたと話したというのである。もしこの証言に間違いがないとすると、事件直後の興奮さめやらぬ時期における被告人の作為をまじえぬ供述として、その重みには無視できないものがあるといってよい。しかし、被告人は、原審公判廷において、現場に臨場した警察官に対し、自分が先に鋏で突きかかったと述べたことはない旨強く訴えており、警察官作成の弁解録取書によれば、弁解録取の手続きは、事件発生後間もなくの当日午後四時五三分ころに行われたことが明らかであるが、これにも「私は、かねてから知り合いである甲野太郎さんから借りていたお金の返済をせまられ喧嘩となり、仕事で使っているたち鋏で怪我をさせたことは間違いありません」と記載されているだけで、被告人が先に鋏で突きかかったという記載はない。更に、同日午後六時五〇分ころから被告人を立ち会わせて実況見分が実施されたが、その実況見分調書にもその時の被告人の指示として、「ここで(B点)甲野太郎と殴り合いの喧嘩をしたところで、甲野はC点のアイロンで私の顔を殴り、私はD点にあったたち鋏で甲野に突きかかりました」と記載されているだけで、被告人が先に鋏で突きかかったという記載はないのみならず、むしろその書き順からすれば、甲野が先にアイロンで殴ったというように読めないでもない。翌一一月三日付警察官調書には、甲野から先にアイロンで殴られたので、鋏を手にした旨記載され、以後、問題の一一月一二日付検察官調書に被告人が先に鋏で突きかかったという供述が録取されるまで、一貫して甲野から先にアイロンで殴られた旨警察官・検察官調書に記載されていることに照らすと、村山道雄の原審証言に高度の信用性を認めることはできず、被告人の弁解を虚偽であるとして排斥するのは相当でないというべきである。

そこで進んで、一一月一二日付け検察官調書の信用性について考慮するのに、被告人を取り調べた検察官山本幸博の原審証言によれば、被告人と甲野の言い分が真っ向から対立し両者相譲らなかったが、同検察官は、勾留延長をしないで事件を処理しようと考え、一一月一二日の夕刻留置先の尾久警察署に出向き、被告人、甲野、被告人、甲野の順で取り調べたと思うが、被告人は最初の取調べの際は、甲野から先にアイロンで殴ってきたので鋏で突きかかったと主張していた、二回目の取調べの際、被告人の言っていることは嘘であるという心証を抱いていることを告げたうえで、その根拠を逐一紙に書いて説得したところ、被告人は、当初自分が先に手を出したのではないと元気よく反論していたが、そのうちに段々うなだれるような感じとなってきたため、口には出さなかったものの、その態度から先に手を出したことを認めたものと理解し、その旨の供述調書を作成することにして、立会い事務官にその内容を口授して、供述調書を作成した、その後、同検察官が大きな声でゆっくり読み聞けし、「これで間違いないか」と尋ねると、被告人は頭をこくりと下げたので、「間違いないなら、ここに署名するように」と言うと、被告人は、また頭をこくりと下げて、署名指印した、というのである。一方、当日取調べに立ち会った検察事務官齋藤光明の当審証言によれば、当日、山本検察官は、被告人、甲野、被告人、甲野、被告人の順で取り調べた、被告人は一、二回目の取調べの際は、後から手を出したと主張し、三回目の取調べの際も、当初は同じ主張を繰り返していたが、検察官から追及・説得されて、「わかりました、私が先に手を出しました」という趣旨のことを言って、犯行を認めた、そこで、検察官の指示により口授された内容を筆記し調書を作成したが、録取を始めてから終わるまでの間、被告人は何度も口を開き、検察官とやりとりをしている、被告人が犯行を認めるきっかけとなった検察官の質問の内容は覚えていない、というのである。

右のように、山本検察官と齋藤事務官の証言内容には、取調べの状況、調書作成の状況等について大きな食い違いがあり、そのいずれが、取調べの真相に近いのか、容易に断定することはできないが、いずれにしても、逮捕の段階から終始甲野が先にアイロンで殴ってきたので自分も鋏で突きかかったと主張し、この日の取調べにおいても、その旨を強く主張していた被告人が、どういういきさつで自分が先に手を出したと記載された調書に署名指印することになったのか理解しがたく、「この程度の事案なら罰金かな」と言った検察官の暗示に影響を受けた疑いも存するので、任意性はともかくとして、右調書に有罪の根拠となしうるような信用性を肯定することができないことは明らかである。

右のとおりで、被告人の供述中、原判決の認定に沿う自白を内容とするものは信用するに足りないといわざるをえない。

五 このように甲野証言及び被告人の前記検察官調書における供述の信用性には、それぞれ少なからぬ疑問が存するのであって、被告人の原審及び当審供述にも問題の点はあるにしても、右の甲野証言と対比するならば、被告人供述の不自然性はより少ないといってよく、これを信用性がないものとして排斥することはできない。そうだとすれば、被告人の鋏による攻撃は、借金を返そうとしないばかりか、取立屋はまだ来ないよなどと揶揄的に応対した被告人の態度に憤激した甲野の攻撃に対して、自己の身体を防衛するため、やむをえずなした正当防衛行為である可能性が否定できないというべきである。したがって、これを認めなかった原判決には事実誤認があり、それが判決に影響を及ぼすことは明らかである。論旨は理由がある。

よって、その余の控訴趣意について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れないから、刑事訴訟法三九七条一項、三八二条により原判決を破棄し、同法四〇〇条ただし書により、被告事件につき更に判断する。

本件公訴事実の要旨は、「被告人は、平成三年一一月二日午後三時三〇分ころ、○○荘一階の当時の被告人方仕事場において、甲野太郎(当時五七歳)に対し、その腹部に裁鋏で突きかかり、胸部を足蹴にするなどの暴行を加え、同人に全治五日間を要する左手拇指丘擦過傷、胸部打撲等の傷害を負わせた」というものであるところ、前記のとおり、犯罪の証明がないから、刑事訴訟法三三六条により被告人に対し無罪の言渡しをする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官早川義郎 裁判官仙波厚 裁判官原啓)

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